飛べるくらい軽くなりたい

飛べるくらい軽くなりたい

来世は蝶々に生まれたい。そして一生青虫で居たい。

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出張が楽し過ぎたのでセミ1セミ2下戸の愚痴綿棒

眠り姫と挙動不審な王子様の話

私は電車に乗っている。

休日のお昼前、乗客の数はまばらだ。

私はシートに座っている。

私の前には可愛らしい女の子が座っている。

女の子はこの路線でよく見る制服を着ている。

こんな時間に電車に乗っていると言うことは部活動だろうか。

女の子の目は閉じている。きっと眠っているのだろう。

電車に揺られながら眠るのは、さぞ心地よいことだろう。

 

女の子の隣の席は空席で、さらにその隣の席には男の子が座っている。

男の子もまた女の子と同じ制服を着ている。

向かいの席に座っているとよく分かる。

男の子は横目でちらり、ちらり、と女の子を盗み見ている。

きっと男の子は女の子のことが好きなのだろう。

それが分かって二人の間の空席が微笑ましく感じた。

 

ふたりはどういう関係なのだろう。

同じ部活なのだろうか。

それとも同じクラスなのだろうか。

顔見知り以上、知り合い未満。

同じ空間を共有しながらまだ知り合っていない二人。

 

学校の最寄駅が近づいてきたのだろう。

男の子は電車から下りる準備をして立ち上がる。

女の子は相変わらず夢の中だ。

男の子は女のこの方へ手を伸ばす。

あと50センチ。

それだけ手を伸ばせば女の子の方の肩に触れられる。

女の子を揺すり起こすことができる。

もしかしたら二人で学校まで行けるかもしれない。

 

電車はホームへと滑り込みドアが開かれた。

男の子の手はまだ50センチのところで止まっている。

電車の発車のベルが鳴る。もうすぐドアが閉まっていまう。

男の子は行き場の無くなった手を握り締めドアをくぐって行った。

女の子は相変わらず夢の中。

 

青春は甘酸っぱいとは誰の台詞なのだろうか。

傍観していた私にはただただ酸っぱさだけが残った。

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